MIDIとJASRACの関係

最近DTMの話題が絶えませんが、昔DTMをやっていた一人としては時々話題になる「JASRACの圧力」という言葉に過敏に反応してたりします。以下は自分の体験談のため主観的な文章ですが当時を知っている人には共感するところあるかなっと。

MIDIとの出会い

元々はマシン語の勉強のために94年にPC-98UX21を中古購入したのですが、当時のPC-98用ゲーム「ファーランドストーリー」がRoland CM-500でBGM演奏しているデモを聞いて鳥肌。コンピュータだけでも作曲と演奏が出来ることに衝撃。でも当時からMIDI音源は高価だったので高校生が買えるものではなくしばらくはFM音源のYM2203弄りとN-88BASIC上でMMLによる演奏データ作成をやってました。(耳コピと採譜は小学高学年くらいから始めた。さらに言えば小3~小6の時に使っていたYAMAHAエレクトーンにMIDIのロゴが入っていたのを再発見するのはさらに数年後。楽器同士繋げるだけの物と思いDTMと連携できるなんて思いもしませんでした)

またそのころに通信カラオケなるものが登場し楽曲データはMIDIフォーマットに対応していました、その時にこの業界でカラオケデータを作る仕事が増え食っていけるかなと思ってましたが、親に猛反対されそうなので言えなかったですね。

その後カラオケボックスでは曲の配信が通信回線(多分ISDNとか)を利用してどこのカラオケ屋でも楽曲数が増え、新しい曲も早く提供されるようになりました。通信カラオケのこともあるので多分MIDIでやっているのだろうと思ったらMIDIフォーマットだったかどうかは分かりませんでしたが明らかに演奏データを落として電子音源で演奏させているのはすぐにわかりました。

PC用MIDI機器を入手

96年PCをPC-9801BX2(中古)に買い替え。このときにSoundBlasterとYAMAHA DB50XGを使い始めた。習作がてら楽譜からのカラオケデータ作成やエレクトーン演奏の練習の為のお手本作りなどを無料で請け負ってました。98年にはハチプロを購入しソフトもXG WorksからCakeWalkに切り替え。でもこの頃からバイトとプログラミングに時間を取られだんだんMIDIは再生機器としか使わなくなっていく。

2000年ネット上でのMIDI公開に著作権料が発生

2000年にMIDIユーザに衝撃的な事件が勃発。この時は既にPerl屋としてウェブ制作の支援をやっていたときですが、FLASHのBGMとしてのMIDI制作ということもありました。さらにこの時点ではインターネットは一般に認知されていましたがまだブロードバンドが普及していないためネット上の音楽交換としてmp3だけでなくMIDIも大量に配布されており、通信回線の都合上MIDIデータの方が入手しやすかった。また音源としてハチプロを持っているので互換性で悩むことも少なかった。さらに言えばMIDIデータに関しては二次著作物が多いのは認識していたがCDからコピーしたものとは違い、耳で聞いたものを電子音源で再現したものだし再現性でも生演奏には到底追いつかないため著作権料を払うことに対しては強い抵抗があった。

News:個人サイトでの楽曲利用,MIDIユーザーの猛反対も文化庁が認可
http://www.itmedia.co.jp/news/0012/22/jasrac.html

もちろんMP3に関しては、明らかに違法コピーという認識があったのでMP3サイト管理人や一生懸命夜中にシコシコダウンロードしていた連中に対してはザマーミロと言った。しかしMIDIに関してはやりすぎでないかと思った。当時を知るDTMユーザはこの事件をJASRACの圧力と表現している。

当然MIDIデータの作成に関して原曲の音源は使用しないので、演奏・歌手の原版権は及ばない。
当時の音源ではMIDIフォーマットのまま配布する場合にボーカルは存在しないため、作詞の著作権は及ばない。(歌詞を同時配布したり、埋め込んだ場合は別)
あとは作曲の著作権となるが、これが楽譜を元に権利が発生するのか聞いた音で判断するのかで意見も異なる。
実際の楽器でも楽譜だけの情報では再現しきれない演奏テクニックがあるのと同じでまず楽譜どおりに入力してもMIDIはチープな演奏しかしてくれない。人が演奏しているように再現するには、パラメータの調整で音質を変えたり、複数の楽器の音を組み合わせて一つの音を作り上げたり、時には音程まで変えて似せようとします。このようにして作られたデータは元の楽譜とは似ても似つかないものになっている場合もありますがMIDI演奏のノウハウが詰まっていて、DTMを学習する人には貴重なデータです。さらに耳コピで作成したデータの場合は楽譜も使用していないのである。つまり楽譜を元に著作権を主張するなら耳コピ+MIDIテクで作った曲は盗作呼ばわりはされても二次著作物ではないと考えることが出来る。
(JASRACでは曲名と歌手名で管理しているので、全く違う曲名つけたものはどうなる?盗作には間違いないが)

次に非営利個人でも著作権料を払うかどうかについては、MIDIの制作活動で誰か損をしているのか?という話題が挙がった。著作権料を払うことと著作者に対する損害の有無は単純に語れない話だがDTMユーザにとってはネット上のMIDI制作活動が経済的負担により事実上制限されてしまった。これは自己アピールを含めた公表を目的とした人だけでなく、これからDTMを始める人にとっても勉強の場やコミュニティーが一気に消滅してしまった。

この事が大げさにJASRACの圧力で若い芽を摘んだとか、アーティストの質が低下したと言われていますがどうなんでしょう。職業として作曲者を選択した人はこれくらい理由で曲げたりしないし、淘汰されたのは演奏用音源としてしか使わなかったライトユーザ層が殆どな気がします。その影響がDTMユーザの減少とPC用ハード音源の新機種が出にくくなった事に繋がっていると思います。ソフトシンセの性能向上も関係ありそうですがやはり相当CPUパワー必要とするのでヘビーユーザしか残れなかったと思います。

私の場合はブロードバンドの普及でカラオケからMIDIデータが消えたことでカラオケ用MIDIデータの制作という仕事は無いと判断した事だし。その割には音響だとか音質については関わりを持とうとし、耳コピで苦労していたこともあってMIDIとは逆で人工知能で音源を抽出しその音階を検出することは出来ないかと研究内容の近い研究室に入り込んで、結果音声認識・雑音除去のベンチャーに就職することになります。

その後携帯電話でFM音源+MMLそしてSMAFとDTMと同じ流れでやってきたのは驚き。でもその携帯電話も着うたフルに押されて今では携帯電話ゲーム用音源。

FLASHのコンテンツで貴重な存在となったDTM職人

またDTMではハードウェア音源を持つユーザの割合がどんどん少なくなり、WindowsXP搭載のソフトシンセが標準のMIDI音源?という気がしてきた。昔は特定の音源を駆使するものだったが、ソフトシンセで問題なく聞けるようにする方法と特定の音源を利用する場合はMP3に変換するという形式に変わってきました。この時代の一般DTMユーザーはDTM職人と呼ばれるようになり、FLASHのBGMでコラボレーションする機会が増えてきたと思います。ただオリジナル曲で提供しないとFLASHが黒作品(著作権に問題がある作品)となるためそこまで出来る職人の数はそう多くありません。(だから職人と呼ばれるようになったのかな)

VOCALOIDの登場

ここからは以前書いた事と同じですが、会社で音声合成だけはやってなかったので情報を集めている最中にVOCALOIDのニュースを見つけるんですね。ただロボットボイスになりやすいのでTTSの方がFLASHに使われていたと思います。(価格の問題もあったかな)

作品公開の場が個人サイトから動画投稿型サイトへ

FLASHの人気が上がるにしたがって問題化したのが転送量の問題。まだFLASHのみで作成した作品は軽量だがその中にMP3等の音楽、画像・動画を埋め込むことによって急激に容量が増加。これによってFLASHを公開する場所を転々としないとアクセス集中時に見れなくなったりする。ちょうどその時期に登場したのがYoutube。但しここで流行ったのはMADとアニメ録画、特に制作中心の流れではなかった。

アイマスMADとニコニコ動画

ニコニコ動画は再生している動画に擬似リアルタイムでコメントを入れ、みんなで楽しむ体験ができるサービスだと思っている。これと似たようなものでは実況掲示板を見ながらTVを見るのに近いと思う。
そしてアイドルマスターの人気と別のBGMを入れたMAD作品が流行った。このころのDTM職人は打ち込みだけでなくサンプリングを駆使できる人が増えた。これはソフトシンセ発展やMIDI関連機器がレコーディング向けのものが多くなったおかげもあるかも。

初音ミクの影響で一気にDTMユーザが増える。

ただここで注目したいのは今まで生き残ってきたDTM職人と初音ミクからDTM始める人では極めようとしている範囲が違うこと。初音ミクからの人は当然ボーカルにこだわり、これからもこだわっていくと思う。現状BGMの制作は難しいためオリジナル曲を制作するにはDTM職人の協力が必要だと思います。

現在はVOCALOIDの認知のため一般的な曲のカラオケ版やボーカル除去の処理をしてVOCALOIDに歌わせている動画が多いのですが、また近いうちに黒作品として抹消されてしまう運命にあると思います。

今度こそは自爆してDTMがマイナー趣味に戻らないようにレコード会社や管理団体の権利が及ばないユーザ同士のコラボレーションによって発展できる基礎を作りたいですね。

追記:2007/12/24 23:43
この記事がYoutube板に張られるのに今気づいて、ウソ書いてないか読み直し(^^;
耳コピMIDIについて自論展開してますが当時は音楽著作権についてよく知らず、CDとかの原盤管理してるとことしか思って無かったです。

「カラオケからMIDIデータが消えた」も当時の思い込み。個人的にサンプリング系はDTMとして認めてなかったしなぁ。当時と比べるとDTMの表現能力って凄く広がった気がします。

スレにも10年前という書き込みがありますが、パソ通はやってなかったから96年辺りのMIDIに対するJASRACの動きは知らないです。というか10年前何があったの?躍起になって探してた。

VOCALOIDの誕生ニュース

Meikoが2004年11月、Kaitoが2006年2月リリース。あれ?私が聞いた初めてのVOCALOIDのデモは2003年だったはず。ということは男性・女性ボーカルは間違いないとしても当時聞いたのはMeiko/Kaitoでは無かったようですね。

当時のニュース記事とサイトを検索したらまだ残っていました。

ヤマハ、歌詞と音符から人の歌声による楽曲を作成する歌声合成ソフト『VOCALOID』を開発
http://ascii24.com/news/i/soft/article/2003/02/26/642097-000.html

News:歌詞とメロディを入力すると歌い出す ヤマハが歌声合成ソフト開発
http://www.itmedia.co.jp/news/0302/26/njbt_06.html

Vocaloid
http://www.vocaloid.com/jp/sample.html

ヤマハサイトのデモ曲はもう聞けないみたいですね。orz

どうして2003年にVOCALOIDを聞いたという記憶だけ鮮明かと言うと2003年末まで音声認識業界で働いていてPC/PDAでアプリケーションを作ってました。そこで認識した音声を復唱したり音声人力した質問に音声で回答するために音声合成(TTS)を必要としますが、当時はLaLaVoiceのエンジンを利用していて他にも国内海外問わず高品質な合成エンジンは無いかなと(当時の取引先から子供向け商品としてキャラクターボイスの音声合成は無いかと要望もあったので)調査しているときに知ったわけです。VOICALOIDは業務上必要なツールではなかったのでデモを聞くだけで終わったのですが、正直音声認識より音声合成のほうがチャンスありそうだなと思いました。

それからたった4年でVOCALOIDがネット界隈をお騒がせするほどになるとは思ってもいませんでしたw
今の人気はコンセプトが受けて新しいDTMユーザ層を開拓しているという感じです。これが定着してDTMユーザ層以外にもVOCALOIDとしての評価が出てくるまではもうしばらくかかりそうですね。

ということはMeiko/Kaitoのデモを聞いたのは記憶違いかなっと改めてサイト探して聞いてみたら、やっぱり過去に聞いている…。少なくとも今年じゃないし多分DTMマガジン経由だな。

初音ミク

2007102001-1

急ぎで必要なわけじゃなかったのですがMIDI機器の模様替えやっていたのでソフトも購入しました。
因みにDTMマガジンは以前から書店で購入していたのですが、唯でさえ少なくて買えない時もあるというのに初音ミクの異常な人気もあって今後さらに買えなくなりそうだったので、数年ぶりに定期購読に切り替えました。つーかマジで「吉野家コピペ」のような気持ちになりましたね。「お前らな、初音ミクの特集如きで普段読んでないDTMマガジン買うんじゃねーよ」

まぁ、初音ミク狙いでDTMマガジン買えなかった人と転売目的で買い占めた人が定価の三倍近い4000円前後で必死に取引しているようですが、書店販売が終了しても定期購読なら普通に買えますよ。しかも開始月を2ヶ月前の号から指定できるので年末まで余裕です。初音ミクを切欠にこれからDTM始める人はどうせDTMマガジンのお世話になるだろうからマジで定期購読をお勧めします。

何故って、一般向けの曲をオタクは発掘しないから。 – Scott’s scribble – 雑記。
http://d.hatena.ne.jp/ymScott/20071018/1192712364

あくまで現状では、初音ミクの魅力がわかるのはオタクです。 – Je n’avais pas l’intention d’aller à la mer.-HINAGIKU SAID ”LIVE OR DIE”
http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20071018/1192707995

初音ミクのコンセプトや購入層からアニオタ層が多いのは確かですが、もっとVOICALOIDエンジンについて語って欲しいところかな、昔MeikoとKaitoを買わなかったのはデモ聞いてまだまだぎこちないなーと思い、今回のミクはそれが無くなっていたから「使える」という判断が出来たわけですから。でもニコニコにアップされているのを聞くとそれぞれのサンプリングが歌手と声優という差がでるのか、ぎこちなくてもMeikoのほうが歌がうまいんだなー。ミクはエンジンが新しく安定しているのでチューニング失敗してもロボボイスじゃなくて「アホの子」になるから受けてるみたい。MeikoとKaitoもVOCALOID2エンジンでリニューアルしないかなー?

あと選曲に関しては、私個人で言えば基本的に歌は聞かないし(普段聞くのはクラシックとかトランスといったボーカルが無いのばかり)アニメも普段見ないのでJ-POPもアニソンどっち聞いても初めて聞くという点で条件が同じだったり原曲知らない前提なので原曲との比較はせずに公開されているコンテンツだけで評価するけどそれって珍しい方かな?

既存曲をVOCALOIDでカバーするという発想ではなく、どうしても知っている原曲との再現性を批評する事に固執したいなら勝手にやってくれって感じです。声の主が違うのにモノマネをするのは制作する側にとって技術を積むメリットがありますが、似てないからっと言って酷評したらかわいそうです。
また初音ミクの絵や3Dは、DTMとは別のベクトルなのでそれはそれで盛り上がっている分にはかまいませんが本体はVOCALOIDであることを忘れないで欲しいですね。

第1回:「初音ミク」に注目すべき理由を考えてみた:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071018/284847/?P=2&ST=ep_webpluse

なぜ初音ミクが注目されるのかの説明わかりやすいです。
ただ既存曲(正確にはJASRAC管理楽曲)のカバーには、流通の際に著作権料の負担が必要になるので個人では敷居が高いし気軽に公表(自主流通)できないとなるとモチベーションの維持も難しいと思います。また、オリジナル曲で行うにはもっとDTM人口を増やして層を厚くして良いものを沢山生み出す環境してしていかないと思います。最終的にはDTM全体が盛り上がってくれるを期待。

公開の新旧の差もでるため確かに再生数は少ないですが、みんな聞いたことがある思う曲で探してみました。

ニコニコ動画(RC2)‐初音ミクのドナドナ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1066855
ちょっとだけ替え歌になっているけど感じは出ています。

ニコニコ動画(RC2)‐初音ミクが今日の日はさようならを歌っていきました
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1321961
小学校で歌ったことありますね。
もしかしてミクって唱歌が得意なんじゃないかな。

ニコニコ動画(RC2)‐音声合成で歌わせてみた「この木なんの木のうた」(初音ミク Ver.)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1114461
正式名称は「日立の樹」だそうです。
これは凄いちゃんとカバーしてるし使える品質。

初音ミクの人気で再び脚光を浴びたMEIKO

以下は歌唱力の良さが再認識されているVOCALOIDの姉貴分「Meiko」。探したところ曲数自体少なくアニソンが多いようですが、歌わせるなら今のところMeikoのほうがカバーできる曲が多いような気がします。(ただ初代VOCALOIDでは相当な技術を必要とするみたいで調整のほうが難しいとか)

ニコニコ動画(RC2)‐MEIKOとミクの真摯な再挑戦。カッチーニのアヴェ・マリアを歌う。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1288112

ニコニコ動画(RC2)‐アンインストール (VOCALOID ver.)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm476733

ニコニコ動画(RC2)‐創聖のアクエリオン (VOCALOID ver.)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm346059

上2つは初めて聞きましたがここまで歌わせられるのが凄い。多分原曲でもカラオケが難しい部類なんじゃないかな。

ニコニコ動画(RC2)‐君をのせて (ボーカロイド ver.)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm680506
これもアニソンですが認知度で言えば問題ないと思います。小中学校の合唱でも歌うし。

以上は全てニコニコ動画へのリンクですが、Youtubeにも進出しはじめています。
その中で出来の良いもの(特にMeikoの)は英語圏からの絶賛コメントが寄せられていますね。特に製作技術について賞賛していて海外のほうが正当な評価をしていると思います。